「食欲の秋」 特別企画

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ガコ坊:おやっさん,秋でんな。

ゴロ爺:なんや,挨拶もせんといきなり入ってきたら,ビックリするがな。

ガコ坊:なんやしらんけど,筆持って,ぼーっとしてはるさかいに,ちょっと,驚かそと思いましてん。
    何してまんねん。

ゴロ爺:見てわからんか? 書道やがな。

ガコ坊:ショドウて,筆持って,ぼーっとすることでっか?

ゴロ爺:違うがな,お習字やがな。どんな風に書こうかと考えてたんやな。

ガコ坊:そうですかいな。何も知らんもんで。
    で,どんな模様の靴にしますんです?

ゴロ爺:また,わからんことを言いなさる。

ガコ坊:いえ,シューズに筆で模様を・・・

ゴロ爺:シューズやない,習字やがな。

ガコ坊:はあはあ・・・あのお寿司についてる赤いおまけ・・・

ゴロ爺:それは,紅ショウガや。

ガコ坊:ほんまに,ショウガないヤツや。

ゴロ爺:自分で言うてどうすんねん。

ガコ坊:それより,なんで今時分に,お習字なんかやってはりますのん?

ゴロ爺:芸術の秋,勉学の秋やないかいな。

ガコ坊:なるほど。

ゴロ爺:わかってんのかい。

ガコ坊:田楽の秋・・・

ゴロ爺:スカタンばっかり聞いとるな。田楽やない・・・ないが,まあまあ,おまはんには,食欲の秋しかないわな。

ガコ坊:そうそう。(笑)

ゴロ爺:まあ,食欲でも,秋を感じるだけ,おまはんもエライな。
    で,どんなもの食べましたかな?
    まさか,マッタケなんぞは,・・・・食べんわな。

ガコ坊:当たり前でんがな。松の実や竹の子は食べますけど,「松」に「竹」は,さすがに食わん。

ゴロ爺:そうやない。きのこのマッタケやがな。

ガコ坊:きのこ? あんなもん食べるんですか? 私,風呂場に置いてますけど。

ゴロ爺:そりゃ,スノコや。

ガコ坊:焚き火でパチパチっと飛んでくる・・・

ゴロ爺:それは,火の子や。

ガコ坊:岡本太郎のお母さん。

ゴロ爺:そりゃ,岡本かの子・・・しかし,おまはん,時々,妙なことを知ってるな。
    しかし,からかわれてるような気がしてきな。

ガコ坊:からこうてました。(笑)
    そうかて,いきなり,貧乏人に「まったけ」はおまへんで。

ゴロ爺:そりゃ,すまんことを言うてしもうたな。
    確かに,最近は,高すぎる。

ガコ坊:ほんまに。うちの子どもら,生まれてこの方,一回も食べたことない・・・(涙)

ゴロ爺:泣かんでもええがな。
    そうや,おまはんとこ,食べ盛りの子どもさんがおったな。

ガコ坊:へえ,2人いらっしゃいます。

ゴロ爺:自分の子どもを「いらっしゃいます」というのは,おかしいがな。
    ま,ええわ。
    (奥に向かって)おい,あれを何本か包んでやってくれんかな。
    (包みを受け取り)いや,ご苦労さん。
    ガコや,これ少ないけど子どもさんに持って帰ってあげてくだされ。

ガコ坊:なんです? マッタケですか・・・なーんや,イモでっか。しょうもない。

ゴロ爺:気ぃ悪いな。いやなことを言いなさる。いらんのやったら,そこへ置いて,とっととお帰り。

ガコ坊:そんな怒らんでも・・・へぇ,ありがたく頂戴いたします。
    あら,栗も入ってますな。

ゴロ爺:その洒落が,おまはんに分かるか?

ガコ坊:洒落ですか? ははあ,栗に芋。栗四里美味い十三里,でっか?

ゴロ爺:そこまでは,わかったか。ホンマは,九里 (栗) 四里 (より) 美味い,十三里半 と言うンじゃな。

ガコ坊:そういや,そんなんも聞いたことがおますな。
    せやけど,その 「半」 というのは,どこにおますの。

ゴロ爺:わからんかえ。包み紙が,半紙じゃないかえ。


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